モノのやわらかさを可視化するカメラ

「やわらかさ」とは?

モノのやわらかさは粘性および弾性という二つの物性で表されます.粘性はハチミツのようにネバネバした特性を,弾性はゴムのようにブヨブヨした特性を意味し,「粘弾性」として一つの物性として扱うことができます.

計測の原理

本手法を用いることで,モノの粘弾性を非破壊かつ非接触に計測することが可能となります.その原理について簡単に説明します.例えば,モノの表面を突っついて振動させたときの様子を想像してみてください.そのモノが岩のように硬ければ,表面に動きはないのに対して,プリンのようにやわらかければ,表面がプルプルと震えます.このとき,その表面に対して,光をあてたとします.すると,その反射光は,モノの表面の震えに応じて,プルプルと動きます.この反射光の動きを解析することによって,モノのやわらかさ(粘弾性)を間接的に計測することができます.実際に突っついてモノの表面に振動を加えると,モノを破壊してしまう恐れがあるため,本手法では,高精度な超音波スピーカを用いることで非接触に振動を加えています.

非破壊・非接触粘弾性計測装置のプロトタイプ

応用

本手法の特長の一つは,従来の粘弾性計測装置では計測できなかった範囲の低い粘弾性が計測可能であることです.例えば,水の粘弾性はその温度によって変化しますが,その変化量は微量であり,従来の計測装置では計測可能範囲外でした.一方で,本手法による装置では,水の温度変化に応じた粘弾性の変化を正確に計測することが可能です.他にも,水面に形成された膜状物体の計測などにも応用することが可能です.

二つ目の特長は,非破壊・非接触な計測が可能であることです.例えば,接着剤の硬化過程は製品開発において重要な要因となりますが,従来の計測装置では,破壊的な計測が必要であり,同一物体を対象とした硬化過程検査が困難でした.一方で,本手法による装置では,物体にダメージを与えずに計測できるため,粘弾性の時間的な変化を計測することが可能となります.